神保町へ行く途中、馬喰横山で下車して次の急行電車を待っていると、
ホームの中ほどを年配の女性が、自らを引っ張るようにぐいぐい前方を目指して歩いて行った。
黒い大ぶりのコート、斜め掛けした赤い大き目なバッグ。
バッグの中身は、原稿?
白っぽさのまさるショートカットの頭が揺るぎもせず前を向いていく。
思い出したーー、
あの姿は、どこかに置き忘れた自らの影ではなかったのかと。
ああ、早く探しに行かなくては。
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急行電車
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